
日本人は「目に見えないもの」をどうみてきたか
近年、展示物にさわることができるユニバーサル・ミュージアムが増えている。視覚偏重の博物館が見落とし、見捨ててきたものは何か。本書には、全盲の文化人類学者で、ユニバーサル・ミュージアム研究の第一人者でもある著者の「世界をみる」多様な手法が紹介されている。なかでも、盲目の女性旅芸人・瞽女の活動から「ユニバーサル」の真意を導き出す独自の解釈は、本書最大の特徴である。

広瀬浩二郎(ひろせ・こうじろう)
国立民族学博物館 人類基礎理論研究部 教授。総合研究大学院大学 人類文化研究コース 教授。
自称「座頭市流フィールドワーカー」、または「琵琶を持たない琵琶法師」。
1967年、東京都生まれ。13歳の時に失明。筑波大学附属盲学校から京都大学に進学。
2000年、同大学院にて文学博士号取得。専門は日本宗教史、触文化論。
「ユニバーサル・ミュージアム」(誰もが楽しめる博物館)の実践的研究に取り組み、“ 触”をテーマとする各種イベントを全国で企画・実施している。
2021年9月~11月、国立民族学博物館において特別展「ユニバーサル・ミュージアム─さわる! “ 触” の大博覧会」を担当した(本展は現在、各地に巡回中)。
岩波ジュニア新書『「よく見る人」と「よく聴く人」─共生のためのコミュニケーション手法』(相良啓子との共著)など、著書多数。
2023年12月には「令和5年度文化庁長官表彰」を受ける。

序 章 「心を育む」ユニバーサル・ミュージアム
第一章 ユニバーサル・ミュージアムとは何か―視覚障害者発の触文化展が問いかける「光」の意味―
第二章 「ユニバーサル」の底流にあるもの
第三章 「ユニバーサル」の深化と応用―身体を開く―
第四章 生き方としての「ユニバーサル」―身体で拓く―
第五章 瞽女―見えない世界からのメッセージ―
第六章 表裏を貫く―瞽女の文化史的意義―
第七章 瞽女唄と現代アートをつなぐ―「触覚芸術」の定義をめぐって―
第八章 触覚にとって「美」とは何か
第九章 触感の人類史―博物館における「さわる展示」の現状と課題―
第十章 「闇」の開拓者たちへ―彫刻には「唄」がある―
付 章 大阪からの発想―「視覚障害者文化を育てる会」設立二〇周年記念対談―